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チモシー

かつて20年以上も前に
僕が一人で山小屋で暮らしていたころ
ヤギを
飼った

ヤギはメェーの一つも言わずおとなしかったが
僕のことをずっと見つめていた

僕はヤギ相手に話しかけていたが、全く意思は通じない日々だった

ある日
僕はヤギを見つめながら
何気なく鼻歌を歌った

うんうんん〜
ううんう〜


すると
ヤギが僕を見つめて


メェーー!!

鳴いた!

僕はびっくりしながらも
また歌った

うふんふんふんふんふんふん
うふんふんふんふんふんふん


メェーー!!


うふふん
 

メェー!


うふふん


メェー!

 

そんな日がしばらく続いて
僕は理解した


ヤギは
ヤギの星からやって来て
人の心の機微を
人の心の微妙なときめきを
食べに来たんだ
それが大好物なんだ


そんな小さなときめきが
いやむしろ
そんな小さな混ざり気のないときめきが
ヤギの星という遠い宇宙と繋がったんだ、と

それに気付いた僕は
今は、宇宙飛行士になって
ヤギの星に行って
今度は僕が 
ヤギの心の小さなときめきを見つけるために
ヤギを見つめて
過ごしています

メェーー!!

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