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​サグラ・エッケン

私はそこに立ちん坊になっていた
北青山の
階段の下の
階段の下の
透明なオフィスの砂嵐の手前

小さな少女のおじさんは瘤の背中をピンクのニットで隠し
乱れた髪を気にしながら白化粧は崩れていく

動物のようにやっと物陰から姿を現しようやく私は対峙したのに
時間帯責任者のオルゴールが鳴ると

少女のおじさんは慌てて斜めにデスクをすり抜けて

売り場というきっと劇場の一部に収まりに行った

髪を気にして斜めにデスクをすり抜けて行きながら私を振り返り

助けて! か
サグラ・エッケン なのか

仮面の様な止まった眼で私を凍りつける


時間帯責任者の少女のおじさんの名前をアナウンスで聞いたのに

忘れてしまったことを酷く後悔している


私はあなたを何と呼びましょう?
 

メメクラゲの様な薄い胸
今日は白い仮面を斜めに着けてきっぱりと無表情な素顔を晒していた

 

谷川が篠原に託した土間
ラダーの光か 
木の葉を何度も潜り抜けて来た光を浴びて
知らない筈の記憶を手繰ろうと試みる


同期や合体できるのだろうか
今日はすり抜けてやっぱりおジャンなのか

PARCO出版の巨大な図録
セシボンの亡骸を
あなた!
と驚いた顔のまま見つめ続けている女子のおじさんに
私は何と声をかけましょう?

助けて!
サグラ・エッケン


あなた!

 

その声だけが
手がかり


これから
泳いで
迎えにいく

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